山奥をバイクで探索することを愛する僕とハットリさんは国土地理院の地図を頼りに夕暮れに深いクマザザの急斜面を下るうち帰り道がわからなくなってしまった。
バイクの横で野宿を覚悟した時、一カ所だけタイヤが通った跡のように地面が柔らかくなっているのに気がついた。
あれ!ここはもしかしたらタイヤの跡かもよ!僕とハットリさんはムギ球の小さい懐中電灯の灯りを頼りに、四つん這いになってタイヤの跡と思われる道をたどって斜面を登り始めた。
間違いない!タイヤの跡をたどる僕らは降りて来た方向に確実に戻って来ている。
そしてついにクマザサ地帯の入り口付近まで戻ることができたのであった。
当たり前だけど難しいルートを開拓する時は、かならず徒歩で全コースを踏破して乗り物でいけることを確認してから往復していたので、ともかく歩くのが一番大変だった。
目印にクマザサを左右に折りながらバイクのところに戻った我々は苦労して方向転換すると、一人づつ順番に斜面を登りながら自分の来た方向に戻った。
1人がルートを誘導しながらもう1人が1人が先に行って待つ。そのヘッドライトを頼りにもう1人がそこまで急な斜面をつづら折りで登り返す。
二人揃うとその繰り返しで少しずつ距離を進める。
「タンクの叫び」当時の山の中、転倒でタンクに大きな穴が開いたXR600
タンクの穴は斜線部分。斜面でバイクが転倒した時、
直径五センチ位の斜めかットされた鋭い切り株がタンクの下面を直撃
赤い矢印の方向から切り株に突き刺されたのだが、
厚みのあるタンクの素材のせいか、真ん中にすぱっと開かずに、まわりが
ブリブリっと引き裂かれる様にちょうど人型に穴が開いてタンクの中身が一瞬でゼロになった。
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ハットリさんはバイクはなんでも上手いが、中でも急斜面をつづら折りに登るのを得意としてるんだ。タイヤのエアを落として、碓氷峠のアプト式のようにタイヤのブロックを地面に噛ませながら確実に前進しながら高度を上げていく。
速度がゼロにならないように、どんなに苦しくてもエンジンを止めないように、
(当時はキックスタートしかなかったから、キックの時に抵抗が大きい密集するクマザサの中や、キックが最後まで降りきらない右側斜面での再始動はけっこう大変だったのだ)
細心の注意とテクニックを駆使してなんとかルートの入り口までたどり着いた我々は固い握手を交わすのだった。
おしまい。
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