Friday, April 27, 2018

君は強盗に遭った人の声を実物大で聞いたことがあるか?

「実物大」本来はモノの大きさを表す言葉だが、これを音声の世界に持ち込んだ男がいる。T田くんだ。世界各地をバイクで旅した後、オーストラリアや北米、南米を家族3人で自転車を使った旅をすることになるが、
当時の彼は自転車による世界一周を目論みつつも、
世を忍ぶ仮の姿は自動車ディーラーに勤める腕利きメカニックとして多忙な日々を送っていた。
 その奥さんは家族で世界一周の夢をかなえるために、深夜のファミレスでウェイトレスのアルバイトを毎晩続けていた。
当然のことながら昼間の彼女は眠くなり、まだ2歳の愛娘はひとりでよちよち歩きでひっきりなしにフォークリフトやトラックが行き交う路地を渡って折り詰めの箱を作っている工場に迷い込んでしまう。
気持ちのいい昼下がり、ナツと仕事しているとドアのチャイムが鳴る。
出てみると箱屋の若旦那がAちゃんの手を引いてうちの玄関にいる。
「おたくの娘かな?工場に来ちゃうんだけど危なくってさ」「いや、うちの子じゃないけど…いいですよ、この娘のお母さん多分寝ちゃってるんだ」
なんて話してAちゃんを預かって、焼き芋でもしようかってナツと三人で落ち葉を集めて焚き火を始める午後。
立ち上る煙に木漏れ日がしましま模様を作るおだやかな午後三時…
みたいな生活だった。

ある晩、Mさんが勤める国道17号線沿いの深夜ガストに強盗が入った。犯人は会計のタイミングで大きな庖丁を出すと「金を出せ」と言ったそうだ。
対応していたMさんは犯人が出した庖丁を見て金切り声を上げてそのまま厨房に逃げ込んだ。その絶叫に慌てた犯人は何も盗らずに逃走したという。

その後は警察による事情聴取だとか検証だとか、Mさんが帰って来たのが明け方で、寝て来たT田さんを叩き起こすと、何度も何度も、まさにエンドレスで強盗が来た部分を再現して見せたという。特に絶叫しながら厨房に逃げるシーンではまさに「実物大」の金切り声を上げての熱演。さすがに参ったよ…とT田氏。
声も実物大って表現、わかりやすいよね。

Tuesday, April 24, 2018

バイクに乗るのがうまくなりたい

もう20年以上前からバイクに乗るのがうまくなりたくて必死だった。
だった、というより今もその気持ちは全然変わらない。
だから修行チックに練習する気持ちはそれほどないんだけど、つい一所懸命走っちゃう。

うまい方がカッコいいし、なによりバイクに乗るのが楽しいじゃん。
こないだ某編集長に「だってもっとカッコ良くなりたいじゃん」って言ったら
「えー?まだカッコ良くなりたいの?」って嘲笑気味に驚かれたけど、僕はそれを聞いてさらにビックリした。カッコ良くなるって誰との勝負でもない自分との戦いじゃん。
この人はその勝負をすでに放棄してるのか!?
もうカッコ良くならなくていいのか!ってね。

でもね、彼を弁護する訳じゃないけど、人はきっと色恋だとかカッコいいとか悪いとか、そう言うものから解脱してからが、ホントの芸術や精神世界に入れるのかも知れないとも思う。
かのリリー・フランキーも昔「早くインポになって色恋だとかを超越した芸術をやりたい」って書いてたし、カッコいいなんて小さいことだよ君。って言いたい気持ちもわかる。
でもさ、バイク乗るならうまい方がいいし、もう放っておくとどんどん下手になる年齢にさしかかってるんだ。オラァ50歳だぜ実際。過去の遺産だけでは現状を維持出来ない。
筋トレしないと腹だけが育って来ちゃうし、バイクの技量も落ちて来ちゃう。

技量と言えば僕のバイクは下手の横好き、周りにはいつもトップレベルのライダーやその友達がいたから、走りに行けばいつも自分が一番下手クソだし、そう言うものだと思ってた。
林道やコースでも速いヤツはあっという間に見えなくなるし、川渡りでも華麗にフロントを上げてさっと渡るんだ、僕はそういうカッコいい姿に憧れ続けている。
それに、勘がよくて運動神経のいいやつはすぐうまくなる。

でもね、クラスで一番ボール投げが不得意でも、足が速くなくても、たくさん乗ったらその分は絶対うまくなる。
少なくとも経験値と技術が上がると走れるスピードは速くなるし、純粋に走ることそのものを楽しめるようになる。

身体に覚え込ませたら、とっさに対応出来ることも増えて来る。
頭で考えてたら間に合わないとっさの動きってあるじゃん。

例えばツルツルの泥っぽい斜面や、路側の白いコンクリートや白線にフロントが乗ってる時、軽くフロントブレーキ握ったらフロントタイヤがいきなりグリップを失ってあっ転ぶ!みたいな時。
どうしたら転ばないかと言えばフロントブレーキを瞬間で緩めてタイヤのグリップを回復させるんだ。
これは頭でわかっていても、転ぶまでのコンマ数秒で考えていたらもう間に合わない。
何度もそういう目に遭って身体が反射的に本能に逆らう動きが出来るようにならないとね。
バイクは理屈で走っても速度がゆっくりなら、かなりの難所も越えられるようになるけど、速く走るならライダーの反応も早くなきゃいけない。
石が崩れた斜めの斜面をトラバースするような状況がいきなり目の前に現われたら?
幅は1メートルくらいなのに深さが4メートルくらいの谷が現われたら?
速くなりたけりゃうまい人とたくさん走るのがいいと思う。

自分よりうまいやつ、速いヤツに追い越されて「クソッ!」って思ったら、それこそがうまくなるチャンスなんだ。
もちろん最後は自分との勝負だと思うけど、目に見える前を走ってるやつは最高のライバル。レース中に追いつくってことはそいつより自分が確実に速いってことだから、
あとは追い越すテクニックを使うとか、静かにプレッシャーをかけてミスするのを待つとか、なんだか話がこんがらがって来たけど、ともかくいつまでもカッコ良くなりたいし楽しくバイクに乗り続けたい煩悩の塊なんだ。
芸術は多分もう無理だな…






Wednesday, April 18, 2018

チャレンジする人と自己責任

 何かを工作してものを作ることや、そのやり方を紹介することが多いこのブログだけど、基本的に「この通りやって失敗しても知りません」とか「自己責任でお願いします」みたいなことは書かないように気をつけてる、これは基本的にはみんなの退屈しのぎなんだし、そんなこと書いたらカッコ悪いじゃん。
そういう注意書きを書いておいたらどっかの誰かが失敗した時に責任取らなくていいって法律でもあるのかしら?

こっちもやり方や、作業をやってる様子までアップしてるんだから
わざわざそんなこと書くなんて野暮ってもんじゃない?


もちろん君達がブログのマネして大けがしたって僕は知らないぜ。
当たり前じゃん、DIYには労災なんてない。
失敗したら自分が痛い目に遭うのは当たり前。
だいたい失敗して騒ぐやつに限って他人のせいにしたがりそうだし、
だからってそんなヘマやったりドジを踏むやつがいるかも知れないリスク回避のために自分が面白いと思うことを書かないなんてもったいないだろ?
僕が時々書いてるホットバイクもそういうところには実におおらかで、ケガしても知らないけどマネしないで下さいとかの注意書きも書かない。ちょっとカッコいいよね。

おまじないみたいに「自己責任で」って、そもそも自己責任っていう言葉自体が冷たい感じしない?失敗しても自己責任なんてみんなわかってる。他人の書いた記事を鵜呑みにして失敗して、さらに誰かに責任をなすりつけるようなやつはちょっと問題アリだと思う。

だけど、ただ失敗した人に、失敗したのはオマエがドジ踏んだからからだ!ってわざわざ指を突きつけるように感じる言葉。あるいはちょっと嘲笑してる感じ、それが自己責任。
僕の被害妄想かな?
もちろん失敗するより成功した方がいいし、出来ないより出来た方がいいに決まってる。

それでもこれからチャレンジするやつを出来るやつが嘲笑するなんてぜんぜんカッコ良くない。
今から20年くらい前、とある会社に削り出しの部品をお願いするために相談した時、何番台のアルミを使ってどうしたこうしたなんて話になって、それはどういうアルミですか?って聞くとすごく丁寧に教えてくれて僕もメモ取ったりして勉強になった。
5000番台ってなんですか?って訊かれて「そんなのも知らないの?」っていちいち言うやつもいたんだけど、そいつは心が狭くてコチンも小さいヤツだな。
知らないから訊いてるんだぜ親切にしてやれよってその時思ったのさ。






Tuesday, April 17, 2018

がんばって面倒くさい作業をしてサブフレームを下げた
FTR
相対的に尻下がりなんだよね。
でもカチ上がったサブフレームは下がって正解だった。




シートの前側を削ったりしたけど
どうも納得いかない。
どこかを改善したらどこかが気になる。
カスタムとはそういうものなのです。
試しにリアサスのマウントを少しずらしてみたら
いい感じの高さになる。
でも、ここにはマウント出来ないよね。
そこで上側を軸にリア側に傾けて、
それに合わせたマウントを作る



ダミーのエンジンマウント改の部品を元に
穴位置とステーのサイズを作図。

ちょっと形を直す。
これいきなり溶接しちゃっていいかは未定。
ホントの結果は走ってみないとわからないから
まずは取り外し可能なボルトオンで計画する。
2枚の鉄板はズレないようにバイスプライヤーで固定して同時に穴開けとか整形をすると
左右とも同じ形になるよ。
すこしリア側に振って、ステーをつける。
元々ショックがあったところは
ボルトで締めて凹まないようにピッタリのカラーを入れてある。

これで問題ないようなら黒皮を剥がしてフレームに溶接しちゃう。 




上が使用前、下が使用後


うん、これなら全然尻下がりじゃない。
早く走って結果を見てみたい。



あと少しマイナーチェンジで
薄いアルミ板の両端と中心にに穴を開けて
ゼッケンを上下でクイックファスナー固定。


僕はこういうギミックに非常に弱いのである。

Monday, April 16, 2018

おにぎりは5個

これはヤバいな…
気が付けは雪はXRのシートレザーの赤と黒の色が見えなくなるほど、降り積もっていた。
時刻は冬山の遭難認定時間16時を大きく回って19時。ここは雪国新潟と群馬の県境の山の中。4人で山越えルートにチャレンジ中、しとしと降る雨からかなり激しい雪に天候が変わって1時間が過ぎた頃だったか。
ここまで、直径1mを越える倒木や、鎖場をロープと人力で担ぎ上げるような難所をいくつも越えて、後は全部下りになる峠まであと少しと言うところで来たのだが、岩場に降り積もった雪でタイヤがまったくグリップしなくなってしまったのだ。
もうこれ以上進むことはできない、となるとあの難所だらけでつづら折れの狭い山道を下るしかない。しかしこうしている間にも雪は降り続き、モトクロスブーツのフラットなソールでは歩くのもままならない。

僕とはっとりさんの持っていた行動食はコンビニエンスストアで買ったおにぎりが五個と、スニッカーズ。途中食べたからおにぎりの残りは2個、飲み水と、当時まだ吸っていた煙草が5本。
僕らはゴアテックスのウエアで、下には素肌にマイクロフリースの長袖シャツ。
他の2名はモトクロスジャージとエンデューロジャケットのみ。
素肌から容赦なく体温を奪い去る雪でもうじっとしているのも辛いのが見て取れる状況。
我々のフリースは、濡れていても肌に接する部分が冷たくないし、ウールほどではないにせよ熱を保っているので、体力にはまだ余裕があった。
でもあまり猶予はない。かと言ってあの道をもう一度引き返すのも相当ハードなルートだし、かなり困難だ。僕らはまだ明るいうちに下に山道と平行するように林道があるのを発見していたので、今いる山道から下にある林道に降りられるところがないか探しに行くことにした。
2人にはエンジンをかけたままの4ストシングルの熱をもらいながら待っていてもらい、ツルツルすべる雪の道なき道を歩いて降りる。いきなりバイクで行ったらもしも登り返せない時にピンチになるからだ。何度も転んだり滑って、かなりタイトなつづら折れの道の真ん中に横たわる大きな倒木にしがみつくようにしながら、急角度でまっすぐ転がり落ちるように下ると、その下は舗装された林道だった。
かなり厳しいがなんとかバイクは通せるだろう。急いでバイクのあるところまで戻ると2台のバイクは淡々とアイドリングを続けていたし、待っていた2人もかなりライフレベルは下がっていたけどまだ大丈夫そうだった。彼らの口にスニッカーズを押し込み、4人でバイクに跨がり急な斜面を下る。ブレーキは全然効かないけど、ところどころはフォークダンスみたいにバイクを抱えて一気に降りるしかない。愛と苦闘のフォークダンスだ。僕らはこうやってどんどんバイクと仲良くなって信頼関係が出来るのである。
雪まみれになりながらなんとか4台を林道に下ろした。
やった!これで雪の中で笠地蔵みたいに立ったまま冷凍人間になることは避けられた。
果たしてこの道はどこに通じているのか。手持ちの2万5千分の1の地図にはまだ反映されていない新しい林道だけど、きっと車のあるところにたどり着けるはずだ。
雪はちょうどフロントアクスルシャフトのすぐ下くらい、乗ったまま走れるギリギリのいい感じの深さだ。走ってるとだんだん身体が温まって手足に血が通って来るのがわかる。少しライフレベルが回復して来ると頭の中はラーメン食べたい、温泉入りたい、暖かい布団にくるまりたい…もう僕らは走る煩悩のかたまりである。
少しペースを落とすとすぐに寒くなる。走るスピードで運動量が全然違うのだ。
それでも1時間以上林道を走って、やっとのことで車にたどり着いたのが午前1時。
本当に生きててよかった!そして一緒に行った仲間も全員生還できてよかった!

以来どんなに簡単なミッションでも水筒に水は満タン、おにぎりは5個買わないといけないというルールはこういう理由で決まったのである。

Wednesday, April 11, 2018

物を作ることと文章を書くこと

 僕も人並みに、いや人並み以上にイライラしたり、頭がこんがらがってどうしたらいいかわからなくなることがある。
実にまったくね。
人はそういう時に音楽を聴いたりバイクをぶっ飛ばしたりするんだと思う。
 音楽は大きな音で聴きすぎて耳が悪くなっちゃったし、イライラした時バイクで思いっきり走ってひどい目に遭ったので、僕は最近では物を作るか文章を書く。
正確には文字を打つんだけどさ。自分の言いたいことを文にしていると、ちょっとイライラしたことなんてどうでもないような気がするし、ミシンを踏んだり、ヤスリで削って金属の合わせ目を丹念に合わせていると自分が部屋ごと水中深く沈んでいくような不思議な気持ちいい感覚なんだ。
治癒行為と呼んでるんだけど、ホントに心が落ち着く。
普段人と話すのは大好きだし、全然苦手じゃないんだけどね。

と言う訳で僕がメールや電話やLINEに返事しないときは、水中深く潜行してるんだなって思って下さい。