Friday, September 2, 2016

「やる気のある者は去れ!」さよならGB400

僕の友達に、何をするにも遅い男がいる。
君のことじゃなくて、ここを見に来たりしないやつ。
一番イヤな感じにバンパーが凹んだロードスターに何年も乗ってて、すごく調子の悪いiPhone4を何年も買い替えずにイライラして、しょっちゅう止まるパソコンに悩まされつつ、過剰なやり直し要求を繰り返すクライアントと何年も仕事してる。
何かしらの手を打つことは簡単だけどそれはやらない。

すぐにやらないのは本人の自由だから全然かまわないんだけど、そういう雰囲気は周りにも伝染するらしく、
ちょっとした始動不良でバイク屋さんにバイクを預けると軽く10年くらい放置されちゃう。

西国分寺にあるバイク屋にちょっと預けたらそのまま10年放置。
みんなにもそういう店には注意してもらいたいからここで名前を出したいんだけど、
いろんな事情もあるだろうからそういうことはしない。


でも10年もブルーシートの下で野ざらしに放置すると、ブレーキのマスターシリンダーはスカスカになるし、
フォークは左右ともシールが切れて、漏れたオイルでボトムケースは泥と油で真っ黒。
スポークも真っ赤になってチェンもギコギコ。
タイヤの空気は完全に抜けてつぶれてヒビが入ってる。
見事に放置したもんだと思う。仮にもバイク屋でお客さんから預かった車両だぜ?
もう、どういう経緯かはわからないけど大変なことになってる。
これではあまりな話なので一緒に直そうってことになった。
で、バイク屋から引き上よう!ってことになってからバイクを取りに行くまで3年くらいかかってる。
でもやらないんじゃない、ともかく遅いんだ。

工賃はいらないけど、僕も何回も埼玉県の奥の方まで修理には行けないから、一度見て出来ることをしてから必要な部品を取り寄せて、数回で修理を終わらせようということで作業に着手。

なんでも、バイク屋はキャブを取り外すのに特殊工具がいるからって理由で放置したそうなんだけど
初めてそのGB400ってのを触った僕が試したら、たいした苦労もなく15分でキャブが外れた。
タンク外してワイヤー取って、インシュレーターが壊れないようにまるごと取っただけ。

特殊工具ってなんだ?そもそもキャブが原因で止まったかもよくわからない感じだ。

そしてそのキャブの汚いことと言ったら、国産のキャブが奥まったところにあるバイクで、買ってから一度もキャブのことを考えたこともない人が乗ってるバイクってあるじゃん。
あんな感じにまんべんなく泥とゴミと汚い油にまみれさせて、それをエンジンの熱で何回も焼き付けたような、整備の地獄から僕をうんざりさせるために遣わされたようなやつ。
バッテリーがダメになったままキックだけで乗ってたっていうし、もともとが全体的に愛なく乗られてた気の毒な状態。



ワイヤーも半分くらいほつれてスロットルの中でトグロを巻いてるから、全開にしても
3/4くらいしかアクセルが開かない。
ほつれたワイヤーのせいでザラザラとして最高に気持ち悪いスロットルの感触。
すぐやらない派の彼は、気持ち悪い感触でパワーが出ないとは思いつつ、そのまま乗っていたという。

始動不良の原因は、多分プラグがちょっとカブッたくらいだったのか、

ゴッチリとワニス化したガソリンを時間をかけて溶かして、ジェット類は手持ちの良品中古に換えて元通りに組み立てたらキック三発で息を吹き返した。

そこで前後タイヤ、腐ったタンクをきれいにする花咲じいって名前のケミカルを買ってもらうことにして、パーツリストと部品は僕が手配した。
僕の頼んだ部品は2回にわけてやって来て、あとはタイヤとタンクの掃除を待つばかりになった。
そこからが「何をやっても遅い」男の名に恥じない感じで、
曰くばあさんの具合が悪い、曰く締め切りが近い、曰く病院に行く。
ネットでモノ買うだけだぜ。
それも激レアなものじゃない、Amazonで普通に売ってるやつ。
手配も動作も遅いのは知ってるから、毎日のようにどうですか?って連絡するんだけど遅々として進まない。
いや、全く進展がないのである。

梅雨も明けて暑くなってくるし、連絡すると苦しそうにするし、
僕のバイクじゃないし、彼には彼のペースがあって、そこに僕が自分のペースを強要する方がむしろ間違っているんじゃないのかって気がして来た。
「やる気のある者は去れ!」かつてタモリもそう言ってたじゃないか。
頼まれたらちゃんとしようと思う自分が自分勝手なわけで、
頼んでも適当にやりたいしちゃんとするなんて面倒くさいって思ってる人もいる。

考えてみたら僕だってきっとそう言うタイプだ。
誰かに尻を叩かれてなにかやるのは大嫌い。

むしろ「タイヤ買った?」とか何度も訊いて大いに迷惑をかけたのは僕だったのである。
というわけで届いた部品は宅急便で送って自分の好きなペースでゆっくり直してくれたらいいと言うことになった。

さよならGB400

早晩キャブレターはまた詰まっちゃうだろうけど、それは仕方ない。

彼にイライラした一番の原因はきっと僕と同じくらいさっさとやらない彼の姿に
自分を投影しちゃったからだと思う。
それは彼にとってはフェアじゃない。

でもバイクがぶっ壊れたような状態でいるのを見ると、持ち主より車両が可哀想で仕方ない。
自動車愛護の精神でバイクをかわいがりたいんだと思う。

機械工具を愛護せよ。

またね!







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