今日はシートの話
トレーシーのシート、だいたいはこのコブラシートみたいなベースになってるのが多い。
特徴はシート本体よりもボディ側で、シートがピッタリはまり込むようなモールドが付いていて、その溝にシートがポコッてハマってるんだ。
こんな感じ、下の写真を見てもらったらわかるかな?
ここにコブラシート的なシルエットのシートが入る。
往年のトレーシーよりすこし長めになってる。
今回のテーマのひとつとして「タンデムは男のロマン」
ってのがあって、タンデムシートに誰か乗せて走れるバイクにしたかったんだ。
まだこの時点ではシート周りの縁は作ってない。
この位置を確実に決めておかないと、出来たシートがズレてくっついちゃうからね。
まだカウルの表面はビニール袋のシワが残ってる。
丸に斜線が引いてあるのは凹んだり出っ張ったりしてる修正が必要な部分。
ウチに持って帰ってシートのウレタンを貼る。
今回も僕は岐阜県関市にあるKING OF SEAT野口装美にお願いした。
東京にも神奈川にも埼玉だって有名どころはたくさんある。
かっこいいシートはもちろん見た目が重要、さらに実用品としてのシートを考えた場合、防水やシートの硬さや長時間乗っても尻が痛くならない性能が気になる。
では、カッコいいシートは尻が痛くなって当たり前か?
世の中はすごいもので、尻が痛くならない(痛くなるまでの時間がなるべく長くなる)
シートを本気で作っていて、尻の痛みやポジションの取りやすさを真剣に研究している人達がいるんである。
彼らの研究のフィールドはいわゆるダカールラリーに代表されるような、ダートや砂丘を何千キロも走るクロスカントリーラリー。
今はHRCのワークスマシンであるCFR450RALLYのシートを、全てライダーごとに合わせて作ってるんだ。
ワークスマシン!チョッパー好きなみんなにはピンと来ないかも知れないが、
ワークスって言葉は僕には特別なんだ。
レース専用、メーカーの工場チーム、それがワークスマシン。
エンジンだってフルチューン、カウルはペラペラのカーボン、サスペンションにはチタンコーティング、そんなイメージ。
以前に僕が出たBAJA1000はスプリントだけど、その距離は1000マイル、1600キロ
2〜3人で出ても600キロくらいは普通に走ることになるし、いくらレースと言ってもその間ずっと立っているなんてことはない。
もちろん野口装美にシートを作ってもらってその性能はよ〜く知ってる。
それにこのワークスマシンにも描かれてるロゴは実は犬デザイン。
「KING OF SEAT」のコピーも実は僕の仕事なんだ。ちょっとすごいだろ?
アメリカホンダのチームJCR(ジョニーキャンベルレーシング)のシートは野口装美。
ウレタンは自社開発でバイクのシートのために硬さや密度、厚みを変えて作ってある。
ちょっと長くなっちゃったけど、
本当にいいシートは見た目だけじゃくて中身にお金と手間がかかっているのである。
これも何回も書いているけど、中身だけじゃなくて、表皮やパイプの種類もサンプルの中から選ぶことができる。
職人の足立さんはアイアン、社長の野口さんはXL1200Sに乗るハーレー乗り
家具用とバイク用はシートの裏側にあるクロスの丈夫さが違うので、バイクシートに最適な表皮を提案してくれる。
さて、通常の野口装美では中身の販売はしていませんが、
今回は特別に分けてもらって中身から自分でやらせてもらった。
友達だからね。
もちろん依頼したら当然中身のチューンナップをしてくれる。
タンデムで東京名古屋の往復しても彼女が怒り出さないシート、
とか頼みたい気持ちはわかる
でもそれはちょっと違うと思うんだ。
彼女のお尻を気遣って、途中で休憩したりするからいいんじゃないか。
自分勝手はダメだぜ。
写真見るともうちょっと上手にできなかったかと悔やまれるね。
マジックはテキトーに書いてあるけどちゃんと中身をくり抜いて
衝撃吸収ウレタンを仕込んだのである。
その頃カウルはみりん干しみたいに焼かれている。
二枚三枚とウレタンを合わせて接着。
一見なんでもないんだけど、ウレタンには裏と表があった。
上にキルティングがくるのでウレタンの厚みはこのくらい。
実際の資料を付けて、さらにシートにはマジックで直接描き込みをして
ステッチの幅やパイプの太さ、ボタン等を指定させてもらう。
詳細な依頼書とベースを送って数日後
僕がシートの枠を作って待っている。
本当はシートが出来てから枠を作れば100%間違いないけど
ベースにシートを張るとどのくらい大きくなるか、がわかっていれば
同時作業が可能なのである。
これはボクと足立さんのコンビネーションが上手く出来てるからさ。
写真が送られて来た!
依頼はこのコピーのこれ。
リアのステッチはくるっと一周繋げてもらったけど
あとはかなりいい感じだと思わないか?
翌日シートが届いた!
これはすごい!シートの枠にもおそろしくピッタリはまる!
このオールドスクールなスタイルで中身はHRCのワークス仕様!(ちょっとは違うところあるんだろうけどさ)
僕の興奮は最高潮!さらにやる気が増すのであった。
ありがとう野口社長!ありがとう足立さん!
興奮しながら続く…
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