僕はジジイの自慢話が大嫌いで、飲みの席でそういう話が始まると下ネタだけの相づちを打ちまくって相手が呆れて話が終わるのを待つんだ。
でも面白い思い出話は結構好き。
世界の果てを見に行く話、世界各地で起きた怪獣退治やロマンス…
まるでさっき見て来たような面白い話についつい引き込まれてしまう。
そして酒には弱いけどそう言う席で飲むのも楽しい。
ボイラーメーカーって知ってる?
ショットグラスにウィスキーを満たしたやつをジョッキに沈めてビールで満タンにするんだ。
僕は酒に弱いので、それを飲むとたいてい大変なことになる。
たいしてカラフルでもない人生だけど、生きてりゃ大変なことになりたい夜が必ずやってくる。
Jはアウトドアに精通したライターで、元はバイク乗りなんだけど、レイドゴロワーズの取材や、自分でアイアンマンレースに出たりするようなアクティブなタイプ。
僕がオープニング映像を作った講演会ではいつも会場に入り切れない観客が建物の周りを取り囲むような人気者だ。
見た目はいいが、ともかくおしゃべり野郎で、1990年代サハラ砂漠の三大おしゃべり男に認定したいくらい。
吉祥寺の裏通り、狭い階段を上がったバーの小さなカウンターに並んで
僕とJはボイラーメーカーを注文する。
カウンターの中ではエビちゃんがちょっと迷惑顔をして2杯のボイラーメーカーを作る。
「正直ナイト」の始まりだ。
二人ともまだタバコを吸ってたから、もうずいぶん昔の話だ。
大の男が2人で強い酒飲みながら一晩中どんな話をするかは
今度僕に会った時聞いてくれよ。
僕が別の店でボイラーメーカーを頼むことはもうほとんどないけど、
ボイラーメーカーって言う言葉を聞くと
吉祥寺のバーにあった分厚い木のカウンターと、
エビちゃんの困った顔を思い出す。
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