今から20年前くらいに近所住んでいた、親戚のおばあさんの家の掃除の手伝いをした時に覚えたスバラしいタイトル。
彼女はもう70歳を超えていたと思うが、ピンクチラシのコレクター。
当時公衆電話ボックスの内側にホテトルのチラシがびっしり貼られて社会問題になったこともあったあれ。
週に一度、日曜日になると大久保の教会に通う熱心なキリスト教徒の彼女は、一体どこの公衆電話から集めて来るのか、ピンクチラシをたくさん蒐集していた。
高齢の一人暮らしの老婆とキリスト教とエロいチラシの組み合わせはなんともミスマッチだったが、チラシだけではない、
彼女にとってはタダで手に入るものはなんでもコレクションの対象になりうるのだった。
部屋の中はいろんなものがうずたかく積まれて一件ゴミ屋敷のようにもみえるのだが、そのコレクションはきちんと整理されて、これまたひろった石けん箱やシーツの化粧箱にきちんと分類されて保管してある。
さて、そんな彼女のコレクションだが、毎週の教会通いごとに集めるのか、猛烈な速度で増え続けるので、定期的に強制代執行で始末をしなくてはいけなかった。
僕らが踏み込んだ時はまさにピンクチラシの分類中だったようで、
きちんとサイズごとに整理されて机の上にあったいろんなピンクチラシと風俗ガイドの中に燦然と輝く、ベストオブ風俗ガイドのタイトル、それが「男の散歩道」
おばあさんには少し外にお使いに出ていてもらって、その間に薬や、役所からの書類などを取り分けて、残りのチラシやゴミ捨て場から持って来たモダンアートを素早く大きなゴミ袋に入れて回収。
目の前で捨てようとすると大声を上げて抵抗する彼女だが、いない間になくなったものに関しては驚くほど執着がない。
きっと整理整頓をやっていただけで、その結果にはあまり興味がなかったのかもしれない。
世が世ならサブカルの研究家として名を馳せたかもしれない彼女は、ピンクチラシがこの世からなくなった後も、次々と不毛なコレクションを続けていたが、
僕が初めてパリダカールラリーのスタートに湧くパリから帰った冬の寒い日、棺に入って固く目を閉じたまま僕と対面することになって、コレクションも終りを迎えた。
男の散歩道は捨てちゃったけど、
その頃路上やお店で配ってた膨大なポケットテッシュのコレクション、
中でも合併前の太陽神戸銀行や、三井銀行、SONY Handycam、なんかはちょっともったいなくてね。
そんなおばあさんの思い出を捨てられないで持っている僕もゴミ屋敷予備軍。
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